船弁慶からくり御籤
船弁慶からくり御籤(みくじ)とは
参拝者の皆様に、実際に紐を引いて江戸時代伝統の「からくり人形」の操作を体験して頂ける「おみくじ」でございます。
平成28年に完成した「芦刈からくり堂」に引き続き、〖からくり人形師・九代玉屋庄兵衛師〗に制作頂きました。
「おみくじ」を運ぶカラス天狗は、『大覚寺縁起絵巻』に登場する「山伏」が変身した「カラス天狗」です。大覚寺の山伏は、北摂の山で唯一大阪湾の長洲大物浦を望む事が出来る剣尾山山頂と、剣尾山から望むことが出来る山城の愛宕山山頂を使って、瀬戸内海の変事を京の都に伝える役目を担っていたようです。
「船弁慶」の題材は、摂津国の名所を紹介した江戸時代の地誌『摂津(せっつ)名所(めいしょ)図会(ずえ)』に登場致し大変有名になった「竹田からくり芝居」の「船弁慶」を参考に致しました。
そしてさらに、能楽『船弁慶』の登場人物だけでなく、大覚寺に関係文書が残る、『平家物語』を完成させ、室町幕府と関係を深めながら琵琶法師の職能団体・「当(とう)道座(どうざ)」を組織した琵琶法師の巨匠・覚一(かくいち)検校(けんぎょう)と、彼ら琵琶法師たちが信仰していた、琵琶法師の守護神であり、「大覚寺市庭」の市神様である大覚寺の弁才天も登場し、華やかな「琵琶の絃の音」もする「おみくじ」となっております。
能楽『船弁慶』は『平家物語』を題材にして作られた作品で、『平家物語』は大覚寺の市庭を活動の拠点のひとつにして、その市庭の市神様の弁才天を守護神として祀った琵琶法師たちが語り伝えた物語です。
能楽『船弁慶』の舞台となった尼崎の大物ノ浦は、かつて「大覚寺市庭」があった場所であり、能楽『船弁慶』は大覚寺と大変縁の深い物語であると言えます。
なお、大覚寺には室町幕府・第2代将軍足利義(よし)詮(あきら)公が総勢7万餘騎の兵を率いて半年間在陣し、「天下静謐」を願った祈願状なども残り、鎌倉時代には、後伏見天皇の中宮(左大臣西園寺公衡(きんひら)の娘、広義門院・寧子(ねいし/やすこ))の御懐妊、量(かず)仁(ひと)親王(光厳天皇)の御生誕の祈願状なども残ります。
「からくり御籤(みくじ)」
摂津名所図会
江戸時代のからくり人形師、竹田近江は寛文二年(1662年)大阪道頓堀で「竹田からくり芝居」を旗揚げ公演し、大評判となりました。
摂津名所図会にはオランダ人が「竹田からくり芝居」のひとつ、能楽『船弁慶』の一場面である「尼崎大物から船出する源義経、弁慶一行と壇ノ浦で滅ぼした平知盛の亡霊が登場する大物の浦の情景」を見て驚く様子が紹介されています。
平成29年完成の「烏天狗からくり御籤」に、この地元を舞台とする能楽『船弁慶』の「からくり人形」を組み入れ、平成31年節分、「船弁慶からくり御籤」として披露致します。